Pops, Rocks, Remix!

ポップだったり、ロックだったり。世の中にある様々な音楽の中から好きな音楽について記述する随筆集です。

Man Up! ~IDLES~

さて、初のバンド紹介記事となる今回は、「IDLES」の紹介記事にしようと思う。決して「IDOLS」ではない。なんならむしろ「アイドル」からはかけ離れた見た目した5人組のバンドである。

 

イギリスのブリストル出身のこのバンドは、2014年に今の体制の5人になり、2015年に二つのEPをリリースする。そしてそこからアルバムの制作を始め、2017年に1stアルバムの「Brutalism」をリリースする。するとそのアルバムが好評になり、イギリスのバンド・ムーブメントでは一躍有名になった。

 

 

このアルバムを制作している時に、ボーカリストのJoe Talbotの母親が長期に渡る病気の療養の末に亡くなったらしい。このことがバンドにとっての転機となったらしいのだ。この「Mother」という曲とアルバム「Brutalism」のジャケットには彼の母親の写真が使われている。

 

 

そして今年、二作目のアルバムの「Joy As An Act Of Resistance」がリリースされる。正直な話をすれば、このアルバムの中の曲「Danny Nedelko」と「Samaritans」に一目惚れならぬ一聴惚れしたのがこのバンドを好きになった理由である。

 

 

 

この二曲について解説するならば、「Danny Nedelko」は現代における「移民の歌」、「Samaritans」は曲中の歌詞を引用するならば「父親が泣かない理由」、つまり「男らしさ」とは何かを歌った曲、と解釈できるだろう。

 

Danny Nedelkoは、ウクライナ出身でバンドメンバーと親交のある人物らしい。そして曲の「Danny Nedelko」で、印象的な歌詞がある。

Fear leads to panic

Panic leads to pain

Pain leads to anger

Anger leads to hate

要するに、「恐怖は混乱を、混乱は痛みを、痛みは怒りを、怒りは憎しみを生む」という歌詞である。

 

昨今の移民・難民の受け入れに対するアンチテーゼのなりたちを、こんなにも簡単に、こんなにもわかりやすく言うことができるだろうか。

 

私は、彼らは「恐怖が回り回って憎しみを生むのであって、恐怖をなくせば憎しみも生まれない」、つまり「良い友人として関わりを持てば憎しむことはない」と歌っているものだと思う。憎しみは、結果として「移民を受け入れる側」が勝手に作っているものなのだ、と謳っているのだ。

 

また、「Samaritans」では、冒頭からの歌詞が印象的だ。

Man up

Sit down

Chin up

Pipe down

Socks up

Don’t cry

Drink up

Just lie

Grow some balls, he said

Grow some balls

これらは、全て命令形で構成されており、全て「キチッとしろ!」「男らしくしろ!」と言われるような時に言われる言葉である。

 

そしてこれらは、次のような歌詞で曲中にまとめられている

This is why you never see your father cry

そう、これは我々全員の父親の話であったのである。

 

時に子供である我々、特に男性諸君は「こんなにしっかりする必要があるか?」と叱られている時に考えることがあったかもしれない。でも、それは「父親」として強くなるために我々自身の父親がかけられた言葉でもあるのだ。

 

もちろん、今の時代性別によって「男らしく」「女らしく」なんてものはナンセンスであることは間違いないだろう。

 

しかし、時には人間は強くなければならない時がある。厳しく言われることもある。

 

だが、それも必要なことであり、大切なことなのである。人間は強くなる過程で、さまざまなキツい言葉や、辛い経験をする。しかしそれらは強くなるために必要なことなのである。

 

最後に、「Danny Nedelko」のセッション動画を貼ってこの記事を締めたい。いきなり「All I Want For Christmas Is You」を歌い出すあたりが本当に好きなのである。