ビグスビー付きのセミホロウギター(赤)ほどカッコいいものはない ~UlulU~
まず、日本のインディーズロックシーンと聞いて何を思い浮かべるだろうか。いわゆる「邦ロック」から、ダンスミュージックを取り入れたもの、俗に言うビジュアル系、等様々な形態の「インディーズロックシーン」が、それぞれの地域のライブハウスには根付いている。
そんな中、たまに気が向いた時に元々知っていたバンドを見に近場のライブハウスまで足を運ぶ僕なのだが、人生とは偶然の産物であるとはよく言ったもので、たまたま行った企画で面白いバンドに出会うことが多いのだ。
そんな中で今回紹介したいのは「UlulU」という3ピースバンドである。このバンドを、安っぽい宣伝文句で言えば、「ガールズバンド」であろう。現に3人組のバンドで、メンバーは全員女性であるので、間違いなく嘘ではない。
しかし、僕は彼女達をそのような安っぽい表現で伝えたくないのだ。それはなぜか。答えは、実際に聴いてみればすぐにわかる。
そう、彼女達の鳴らす音楽というものは、広義のロックよりも狭義のロック、それもガレージロックのそれに近いものなのである。
「ガールズバンド」でガレージ、ブルース系のロックを演奏するバンドと言えば「Drop’s」等が例に挙げられ、比較的珍しいものではないと思われるだろう。しかし、例に挙げた彼女達はいわゆる「レスポール」の音であったり、力強いイメージのロックであることが多い。
もちろん、今回紹介している「UlulU」も、力強く歌っている。ルーツの一つにあるブリティッシュロックのような要素を非常に上手く表現している。しかしながら、いわゆる「骨太」のロックと比べると、どこか儚げな趣、雰囲気を感じるのだ。それを人はノスタルジックと言ったりする、そういうものを持っているのだ。2000年代初頭に頭角を現し、2010年代に入るぐらいに段々と収まっていったムーブメント「ガレージロック・リバイバル」の持っている、どこか儚い、物憂げな雰囲気を、「UlulU」は持っていると、私は思う。
また、歌詞に関しても一考の価値があると思う。先の「夕方のサマーランド」という曲の詞をを引用させていただく。
核爆撃でクジラが 何頭も死んだという
貧しき子供達に送る ダルニー奨学金
この世の人たちは 結局何がしたいのか
何よりわからなかったのは 私の心の中
実にシニカルで文学的であると思う。自分の思いがわからなくなっている、という状態を描写するのにまるで関係のなさそうな描写、画から、描き出す、といったものは中々出来ない技法であると思う。
作曲家はギター等様々な楽器を置き、パソコンとにらめっこする時代になったかもしれない。しかしそれとは別で、楽器を手に取り音楽と共に歩いていく、そんな音楽家達もいる。
「UlulU」には単に骨の太いロックを鳴らすだけではなく、どこか危うげな、繊細さと共に歩いている、そんな魅力を感じるのだ。