Pops, Rocks, Remix!

ポップだったり、ロックだったり。世の中にある様々な音楽の中から好きな音楽について記述する随筆集です。

自由の大地、自由ってなんだ? ~Land Of The Free - The Killersによせて~

突然であるが、アメリカという国について皆さんはどのようなイメージを持っているだろうか。広大な土地、エンターテイメント大国、そして自由の国。アメリカン・ドリームという言葉が思い浮かぶように、アメリカという国では、大きなビジネスが動き、その昔は一攫千金を目指し多くの人が海を渡った。その国がアメリカである。

 

そんなアメリカも、時代と共に変わりゆく国なのであろう。かつて、移民してきた白人は元々居住していたネイティブ・アメリカンを迫害し、アフリカからの黒人を奴隷として使役していた。映画「それでも夜は明ける」は、そのような時代の綿花プランテーションを舞台に、ある日突然黒人奴隷にされてしまった男の話が繰り広げられる、いわゆる時代劇的な映画になっている。見た後に色々と考えを巡らされる映画ととなっているので、興味がある方は是非とも見て欲しい。

 

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しかし、それを時代劇とだけ見て良いのだろうか。私は現代日本に生まれているので、正直に話せばいわゆる「人種差別」という話の認識が甘い。でも、いわゆる「日本人」が「その他」を嫌うのは何度も見て、何度も反吐が出た。

 

一般に、広く人の支持を得る方法で最も簡単なことは、「仮想の大きな敵を作り上げる」ことだ。

 

人が人を好きになるのは簡単だ。それぞれの人に多様な良いところがある。しかし、人間は人を好きになるより多くの人を遠ざけようとする。なぜなら、人を好きでいることは疲れるからだ。他人の良いところは、もちろんすぐに探し出せる。しかし、それが視界に入るより多くの悪い点は大量の情報と共に入ってきてしまう。たとえ一度良いと思った人でも、である。その時の離れようとする、遠ざけようとするエネルギーは、近づこうとするエネルギーよりもはるかに大きいのだ。

 

去年、中央アメリカからより良い暮らしを求めてやってくるキャラバンが話題になった。キャラバンは、北アメリカから見たら「全くの他人」である。「全くの他人」は、畏怖する存在になりやすく、それを受け入れない、という選択は簡単で、簡単に支持を集めてしまうだろう。

 

そんな中、The Killersはシングルを配信した。タイトルは「Land Of The Free」、「自由の大地」だ。

 

 

見てもらえればわかると思うが、このミュージックビデオでは全編を通してそのキャラバン、そして国境の壁の周りの模様を描いている。

 

ここで、この曲の歌詞を見てみる。

When I go out in my car

I don’t think twice

But if you’re the wrong color skin

You grow up looking over both your shoulders 

In the land of the free

“looking over both your shoulders”というのは、両方の方を越して何かを見る、つまり後ろを振り返るという意味なのであるが、これを元にここの歌詞がどういった意味かを言えば、「間違った肌の色を持っているなら、後ろを確認しながら育つことになる」という意味だ。これは後の歌詞

So, how many daughters, tell me how many sons

Do we have to put in the ground before we just break down and face it

We got a problem with gun

と繋がれば、昨今の「白人警官による射殺」の話に繋がるのだと考えられる。

 

この曲を通して言われていることは、「アメリカ」という「自由の大地」は、そう語られるよりもはるかに「自由」ではなくなってしまっている、ということだろう。全ての人にアメリカン・ドリームを抱かせ、夢の国も同然であった「アメリカ」の、不条理を言い表している。

 

「自由」を求め、自分の身は自分で守るために手にした銃は、時代と共に単なる凶器になってしまった。そしてその「自由の大地」は、後から来るものを拒絶しようとしている。ただ「同じ夢」を見たい人々を、である。

 

Land Of The Freeは、人々に「自由を求める自由」を問いかけるアンチテーゼなのである。